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C*-代数


 複素数体上のノルムが与えられたBanach空間である代数をBanach-代数と呼ぶらしいが、これに共役とそれに関するC*-indentityを持つ代数をC*-代数と呼ぶ。複素数体Cは複素共役を共役としてC^*-代数と考えられる。【Lan98】などはわかりやすい解説である。

 Topology的に重要な例はcompact Hasudorff空間Xから複素数体Cへの連続写像の成す集合C(X)である。これには、代数の構造を値域での和・積、共役を複素共役、ノルムをsup normで定めるとこれは単位元を持つ可換なC*-代数となる。
 逆に任意の単位元を持つ可換なC*-代数はあるC(X)と同型になる事がGelfand-Naimarkによって示されている【竹阪貴神78】。つまり、compact Hausdorff空間のなす圏と可換なC*-代数の成す圏はequivalentである。彼らははじめ、単なるBanach-代数やNormed-代数の圏を考え、C(-)という関数環を考えるfunctorの逆があるであろうsub 圏を探していたようだ。実際、彼らの証明ではC*の条件はほとんど出てこず、話の主体になっているのはspectrum radiusというnormとほぼ同じ性質を持つものを考えた。C*-代数であると、normとこのspectrum raidusがぴったり一致するというのがうれしいところらしい。
という図式で考えてみると、空間Xに対し、C(Spec_max(X))でcompact Hausdorff空間を構成することができる。これがStone-Checkのcompactificationである。

 こう考えると、C*-代数の世界では可換なC*-代数には空間としてcompact Hausdorffが対応している。では非可換なC^*-代数には空間としてどんなものが対応しているのか?そんな対応は無いのだが、そういう風に思って非可換幾何という考え方ができる。単体複体から非可換なC*-代数を構成し、その可換化したものが関数環となるものを構成している【Cun01】。同様な構成で、局所compact Hausdorff空間上のコンパクトサポートを持つ連続写像もC*-代数が構成されるが、こちらは単位元を持たない可換なC*-代数ができる。
 この空間的な対応は確率論でも非可換な確率論として代数的に扱われている。通常の古典的な確率論が、測度を用いた確率空間をベースに考えるのに対し、*代数とそれ上の状態(測度)とよばれる代数的な写像の組によって与えられる。測度論的確率空間は、この可換な代数的確率論の枠組みに収まるため、それ以外あるいはそれを含めた代数的確率論を非可換な確率論と呼んで研究が進んでいる。特に、独立性、中心極限定理などの非可換な言い換えが代数的・関数解析的に記述される。むしろ統計学者ではない数学者はこちらのほうが親しみがあるのかもしれない。

 C*-代数と空間の対応で重要なのがK-theoryである。複素K-theoryの3本柱としては、topological, algebraic, そしてこのfunction analyticがある。
位相空間のK-theroyというとvector bundleの安定同値類、代数のK-theoryはそれ上の有限生成射影加群の同値類というのが有名であるが、C*-algberaの場合にも可分ヒルベルト空間上のコンパクト作用素とテンソルをとったものの射影元としての記述がある【生中07'】
 
 C*-algberaの圏でホモトピー論を展開しようという試み、つまりモデル構造を導入しようという試みは考えられているが、どうにも狭いらしい。【Ost08】ではC^*-代数上のpresheaf、さらにそのsimplicial objectやcubical objectを考えている。
 C*-代数の一般化としてC*-圏というものを考えられる。もちろん唯一の対象からなるC*-圏がC*-代数という意味である。C*-圏の圏には*-同値を弱同値としてモデル構造を考える事ができる【Amb10】。さらにそれを用いた森田理論を展開している【DT11】
 モデル圏までは行かないが、ファイブレーションと弱同値だけでC*-代数における種々のホモトピー論を説明しているのが【Uuy10】である。